その4

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「そうであろう。あんな可愛い子が性格悪いわけがない。あの男が悪いのじゃ!全くけしからん。若い美しいおなごというのは悪い男に引っ掛かりやすいものじゃて、それにつけてもあのようなめんこい娘が汚らわしい男どもの手によって、はあ、堪らん・・・想像しちゃいかん、想像しちゃいかん、おい、これ、サナエ、泣かんでもよい!わしはお前に罰を与えようとは思っとらんから安心せい!それとじゃ、わしの提案としてケンキチと言ってなあ、これは心ばえのよい男でな、わしが御殿を与えてからも奢ることなく百姓仕事に精を出して今や人望を集めてナラ村の村長になっておるんじゃが、只今、熱烈に恋人募集中じゃ!丁度、御殿が広すぎて寂しがっておるところよ。そこで、どうじゃ、ケンキチと一緒に清い汗を流してみんか!」  サナエはそう言われて、しくしく泣きながらも顔を上げ、神様に向かって拝礼しますと、再び顔を伏せ、今度は随喜の涙を流し始めました。  「よしよし、わしがきっとケンキチと結ばせてやる。えーと、それから小僧、お前の奉公先もよい所を探してやろうぞ!」 「へえ、おおきに、大変ありがとうござります!」 「うむ、うむ、さて、おい!最早、番頭でない男!お前の名は何と申す!」 「へ、へえ、た、タメゾウと申します。」 「タメゾウか、お前はまあ・・・あっ、そうだ、小僧!お前は名を何と申す!」 「へえ、わてはタキチにおますでござります。」 「うむ、おい!タメゾウ!」 「へえ!」 「このタキチと力を合わせて、この店を堅気な商家として立て直すというのであれば、お前を許さんでもない!どうじゃ!もう金輪際、かわい子ちゃんを悪用しない、はたまた、いかがわしい仕事から足を洗うと約束できるか!」 「へ、へえ、今度こそ、絶対、お約束いたします!」 「よし、本来なら断じて許されるお前ではないが、最後のチャンスを与えることにした!」 「ははあ!何という寛大な慈悲深さ!有難き有難き幸せ!感謝感激あめあられ!神に栄光あれ!あなた様こそ神ちゅうの神!絶大なる神!この世のどんな神様より偉い神,尊き神!すごい神!素晴らしい神!とてつもない」 「もうよい、分かった、褒め方が諄い上に下手糞で聞くに堪えん。では、サナエ、わしと一緒にケンキチのところへ行こうじゃないか!わしのスポーツカーでのう。」  お誘いになった神様は、然も嬉しそうににやけられ、サナエも嬉しさの余り顔を上げ、麗しい瞳を涙で輝かせながらにっこりと微笑みました。 
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