0人が本棚に入れています
本棚に追加
失われた秘宝
ーーーこんな落し物をしてしまうなんて。
たった今、男と言わず、生物上のオスであるならば、誰でも発狂するレベルの経験をしてしまった。
とんでもないモノを落としてしまったのだ。
………それも排水溝に。
今頃それは、『どんぶらこ…どんぶらこ…』と、町中を流れていっているのだろう。
……川で洗濯をしているお婆さんが居たら、桃の代わりにあるモノが流れてくるんだよ。お得にも2つね。
ぱっと見、薄汚れたサクランボかな〜って思っても、よくよく見てみたら○玉なんだよね。
そう、俺の落としたものは『金○』!
つまり、男になら付いているヤシの実だよね!
木自体は太いのもいれば細いのもいる。長い奴、短い奴。三者三様・百人百様・千差万別である。
しかし、どんな竿……ゲフンゲフン。どんな木をしていても、実は2つ。一生涯で2つだ。
例え、100年生きたとしても2つから増えることはない。まぁ、病気か何かで失うことはあってもね。
絶対に増えないもの。それが○玉なんだよ。
今回、俺はこの2つしかない玉を落としてしまった。
『手術した?』……No!
『生まれつき?』……No!
『それなら、何で無くなったの?』
……フッ。答えは簡単さ。小銭を落とすが如く、股の間から、ストンッ!と。それはもう見事なものだったよ。
あまりに突然なことだったもんだから、おもむろに蹴飛ばしちゃったよね。ま、そのせいで排水溝に落っこちたんだけど……
何言ってるか分からないだろ?大丈夫。俺も分からない!
それはそうと、俺のこの気持ち分かる?
普段、何気なくぶら下げていた○玉が、ふとした時に居なくなっている気持ちを。
喪失感に浸る間も無くパニックだよね。
思考停止状態ですよね。
今、この状況をどう打開させるかとか、考えきれないよね。
あっ……こんな時は、ポジティブに考えると良いらしいんだった。
《たかが、金の玉を落としただけだ。命があるだけマシなんだ》
ーーーごめん。無理だ。
男からしたら、命と同等の価値がある代物だよ。それを落とすなんて……てか、落ちるなんて…………
そもそも、勝手に落ちるってどんな作りだよ!普通に欠陥じゃねぇか!!
神様よォ、いったん男全員リコールした方が宜しくない?ねぇ、宜しくない?
今まで生きてきて、『玉』を落としたなんて話、聞いたことないよ。
今回のは、神様相手に損害賠償請求しても良いよね!?
100%勝訴する案件だよね!?
あぁ〜あ。ある日突然、玉無しになるなんて……
俺、この先どうやって生きていけば良いの?
温泉や大衆浴場に入ってる時にさ、周りのおじさんとかに『兄ちゃん、玉が見当たらねぇが、どこに置いてきたんだ?もしかして女か?』って、絶対ニヤニヤしながら言われるじゃん。
玉がないんだから、ホルモン関係ってどうなるんだろうね。もしかしたら、女の子になっちゃうのかな?TS的な?
……ヤダなぁ〜男でいたいな〜
おにゃの子とニャンニャンしたいな〜
無くなっちゃったから、風ジョクに行けないじゃん。行ったら100%、玉無し野郎って笑われるじゃん。
この先、何を目的に生きれば良いんだよ。
全てを失うってこう言うことなのかな………?
いや……一層の事、玉を探す冒険に出掛けるのもワンチャン?
7つ集めたら願いが叶う的なパターンもありじゃね?
見つけた順に、自分のものかどうか試していくってのもありかな?
…………いやいやいや。無いな。うん、これは無いわ。
考えが最低ですよね。おにゃの子たちがドン引きの内容ですよ。
男?の俺でも引くわ!生理的に無理っすわ〜。
ふぅ〜。俺の股間に残ったものが、ホースだけなのか……
これまで、ひと時も離れず長く連れ添ったモノが無くなるんだもんな。ある日、急に居なくなるんだもんな。
大切な人を亡くす思いって、こんな感じなんだろうな。
……明日から、どうやって生きていけば良いのか分からない。
……何を目的に生きれば良いんだろう。
……いついかなる時も、そっと寄り添ってくれたモノがない今、俺は生きていけるのだろうか。
ポッカリと空いた、心の穴を埋めてくれるモノはないのかな。
あぁ……俺の……玉。俺のk…ん玉。俺の…………俺の○玉ァアアアアア!!!!!!
《ある日突然、男の元から居なくなってしまった一対の金玉。それがある惑星で、神器として崇め奉られたというのは、また別の話である。》
最初のコメントを投稿しよう!