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冷たい風が吹く中、恒星は夜空を仰いだ。
屋敷の玄関から門までの、広大なアプローチ。建物から溢れる光の中でも、一等星は負けずに輝いている。
「明日は何の星かな」
ハアッと吐いた息が白くこぼれる。恒星は門の所で自分を待ってくれているリムジンへと駆けた。
その様子を、窓に貼り付いて自室から見守る貴美。
「明日、楽しみ!」
恒星の姿が見えなくなると、貴美は星空の中からシリウスを見つけ、にんまり笑った。パッと身を翻し、ベッドにダイブする。枕を恒星に見立ててギュッと思い切り抱き締めた。
あの日、「永遠にする」と決めたキス。1度目は触れるだけ。2度目は情熱的な深いキス。3度目は唇を合わせただけの、優しい静かなキス。
まだあの日の「ご褒美」はあげていない。貴美はそっと自分の唇を押さえた。
ーーうまく弾けたら、ご褒美にキスして
「練習しなきゃ!」
貴美は使用人に先日準備させたマネキンの頭部をクローゼットから取り出して、練習を再開した。
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