22人が本棚に入れています
本棚に追加
/142ページ
貴美は教室を抜け出し、トイレで鏡の前に立った。指でそっと前髪を寄せ、『ベテルギウス』を見つめた。自分の顔がニヤニヤしていることには気付かない。
「早く金曜日にならないかしら」
貴美はスマホで『パパ』と表示された画面を出した。コール音を聞きながらトイレから出て行く。
「あっ、パパ? お願いがあるんだけど。金曜日の夜、絶対晴れるようにしてくれない? ……え? 無理? なんでよ」
明らかに不満そうな貴美に、「ブハッ」と噴き出す男子生徒。入れ違いにトイレに入っていった。貴美はハッとして振り返る。
「恒星くん!?」
「ちょっ、こっちこないで。男子トイレだから!」
最初のコメントを投稿しよう!