ベテルギウス

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 貴美は教室を抜け出し、トイレで鏡の前に立った。指でそっと前髪を寄せ、『ベテルギウス』を見つめた。自分の顔がニヤニヤしていることには気付かない。 「早く金曜日にならないかしら」  貴美はスマホで『パパ』と表示された画面を出した。コール音を聞きながらトイレから出て行く。 「あっ、パパ? お願いがあるんだけど。金曜日の夜、絶対晴れるようにしてくれない? ……え? 無理? なんでよ」  明らかに不満そうな貴美に、「ブハッ」と噴き出す男子生徒。入れ違いにトイレに入っていった。貴美はハッとして振り返る。 「恒星くん!?」 「ちょっ、こっちこないで。男子トイレだから!」
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