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「楊貴妃のお戯れ」
貴美には手に入らないものなどなかった。
父親は若くして祖父の跡を継いだ、年収1億円の銀行頭取。
25ヘクタール(某夢の国の半分ほど)の土地に建てられた邸宅には、ホールやシアターを含む大小50ほどの部屋があり、二十人の庭師が管理する園に囲まれている。休日は自家用ジェットでプライベートアイランドへ出かける。
買い物はいつも父親のクレジットカードで。欲しいものは、いくら高価なものでもすぐに手に入れた。
言うことを聞かない屋敷の使用人は、その日でクビにする。家は貴美が法律だった。
彼女の外見は、選りすぐりの美女の母親の血を色濃く受け継いでいた。
陶器人形のように艶やかな白い肌。ふっくらとしたピンク色の唇。ぱっつん前髪のために余計に大きく見える垂れ目。艶やかで豊かな髪は前下がりのボブで、俯くと襟足が見える。男性なんて、上目遣いに見つめるだけでイチコロだった。
全てのものは貴美のために存在していた。
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