ソラカフェ

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ソラカフェ

「たらーいま」  店の裏から恒星は顔を出し、マスターに挨拶した。カウンターに座っている常連のお姉さんと目が合い、ペコリと頭を下げる。  コーヒーを淹れている40代前半の、オールバックのちょび髭マスター。恒星の父方の叔父だ。 「お帰り、恒星。遅かったね」 「ごめん、友達とゲーセン寄ってた。着替えてくるね」  恒星は扉の向こうに引っ込むと、すぐに裏手の階段から二階に駆け上がった。この上に住居の玄関がある。中学二年生で日本に引っ越してから3年間、ずっとここで世話になっている。  太陽系の星がたくさんついたストラップ。宇宙科学館の300円ガチャガチャで揃えた。その中に紛れ込んだ鍵を摘み上げて鍵穴に差し込む。  中に入るとすぐに上着とネクタイを外し、黒のスラックスに着替えて、壁のフックに掛けている黒のエプロンを身につけた。 「あ、なんか来てる」  机の上で充電中のスマホが、緑の光を灯していた。メールをチェックする顔が輝く。 「さっすが姉ちゃん!」  両手の親指で素早く返信のメッセージを送ると、恒星は急いで階段を駆け下りていった。
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