そいつ

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 午前3時、日も暮れ誰もが寝静まるころにそいつはやってくる。  「パンパカパーン」 ラッパの音が軽快に鳴る。小さなラッパを持ったそいつは僕のベッドの側まで来るといつものように躍り始める。頭のてっぺんがベッドの高さくらいしかない体を左右にゆらし、ときには回り、飛び跳ねたり、逆さになったりベッドの周りを軽快に進む。動くたびにチャラチャラとなる鈴の音、被ったトンガリ帽子の先が重力に沿って垂れている。ピエロのような格好に加えて、無表情なお面から不気味な笑い声がクスクスと聞こえる。あたりは静かで誰もいない、小さなそいつのワンマンショー。観客は僕、一人きり。
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