そいつ

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 そいつがピタリと歩を止める、僕の足より向こう側。爪先のうえに垂れたトンガリだけが揺れて見える。クスクスと止まない笑い声とともにベッドの上へと姿を現したそいつの全体像。そのまま僕の視線まっすぐによじ登ってくる。腹の上までやってくると立ち上がり両手を広げ、トランポリンの上で跳ねるかのように高く飛び上がる。僕の腹をトランポリン代わりに思う存分跳び続ける。不思議と重さは感じなく、触れている感触さえ味わわない。やりきった感じで、僕の腹に座り込んだそいつはどこから取り出したのかさえ分からないゴム風船を手に膨らます。よく見るサイズの風船になると紐で口を縛り、紐の端を持ってプカプカと宙に浮かせる。それを僕に見せつけたそいつは、持っていた紐の端を僕の胸にくっつける。体がフワッと少し浮き上がる感じがして、そのまま意識が遠のいて眠りにつく。
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