第1章 始まりの悪夢

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「──あれ?」 「どうしたの? 圭佑(けいすけ)」 「気のせいか? オレ、こんなとこに痣あったっけ?」 「どこ?」 「ここ。足首んとこ」 「車の中じゃ暗くて判らないわよ。帰ったらよく見せて」 「おい、圭佑。車の中で足を上げるな」 「何だよ、親父。今気が付いたんだから仕方ないだろ」 「……全く。お前は親の言うことを一度も素直に聞いたことがないな」 「はあ?」 「ちょっと止めてよ」 「何か言ったか、圭佑」 「親だからって偉そうにすんなよな」 「何だと! お前、せっかく久し振りに外食に連れて行ってやったのに、何だその態度は!」 「たかが飯行っただけで恩着せがましい言い方だな」 「貴士(たかし)! ふたりともすぐ喧嘩腰になるの止めてよ」 「ん? 何だ、これ……」 「また何か見付けたの?」 「(ちげ)ぇよ……何だよ、これ」 「どれ?」 「これだよ! 目の前にあるじゃん! これ何だよ!」 「(うるさ)い! 車の中で騒ぐな!」 「ちょっとあなた、いちいち怒鳴らないでよ。圭佑、これってどれ?」 「これだよ、これ! 何だよ、これ! 気持ち悪ぃッ!」 「何にもないわよ」 「何でだよッ! これ! これだよ! うわ、動いたッ!」 「何もないわよ。どうしたって言うの?」 「ん? 何だこれ……」 「ちょっと貴士。あなたまで言い出すの?」 「違う。ほら、何か黒いのがハンドルに絡み付いて……」 「何もないわよ。何よ、ふたりとも。ふざけてるの?」 「ふざけてなんかねぇよッ! 何だよ、これッ! ネバネバして気持ち悪ぃッ!」 「や、ヤバい……」 「ちょっと、取ってくれよッ!」 「車の中じゃどうしようもないでしょ。帰ったらよく見てあげるから」 「ううわわわわわ……」 「? ちょっと、あなた。スピード出し過ぎじゃない?」 「オレじゃないッ! この黒いのがアクセルに……ッ! ハンドルも動かないんだッ!」 「ちょ、ちょっと、そこまでしないでよッ! ふざけるにも程があるわよッ!」 「ふざけてないッ! ブレーキを踏めないんだッ!」 「親父ッ! 車止めろよッ! この先カーブだろッ!?」 「やってるッ! やってるけど、脚が動かないんだッ!」 「ちょっとッ! ちょっと止めてよッ! このままじゃ落ちちゃうぅッ!」 「うあああああッ!」 「母さんッ! 親父ッ! オレまだ死にたくねぇよッ!」 「いやよ、いやああああッ!」 「死にたくないぃぃッ!」
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