第3章 発現したもの

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 未明の空に、小さな産声が響いた。  小さな小さな産声は頼りなく、雨空に吸い込まれてしまいそうなほど、か細いものだった。 「産まれたで」  身体を引き裂かれる痛みを乗り越えたヤエに届いたその言葉は、出産の終わりを意味していた。  終わった── 「貞丞(さだすけ)呼んできや。水瀬家の跡取りや」  産婆が姑に指示する。無事に産み落とした感動は、どちらかというと薄かった。それよりもこれが終わったという安堵が大きい。  ヤエの放心した瞳に写った我が子は、何故か()()()()()。  ヤエの希望の光。これからのヤエの幸せの源。この子が居れば、もう軽んじられることはない。水瀬家の次の世代を、我が身で産み出したのだ。私は母になり、水瀬家の一員となったのだ!  けれど、あんなに大きく腹が膨れていたのに……小さい。  何故……と、チラリと疑問が浮かんだが、それは腹と下肢(かし)の痛みにかき消された。後産だ、と思ったヤエは、また綱を握って力を入れた。  けれど……  ヤエの様子に気付いた産婆が、ヤエの下腹に手を添える。  どんどん強くなる痛み──  違う。違う! これは後産ではない!  ヤエは自身の異常に青冷める。産婆もすぐに気が付いた。 「……あんた、まさか」  再び、始まる出産──  腹の中には、()()()()()()()
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