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ピストルが晴天に掲げられた。
隣には他校のライバル。
彰吾は、この50メートルという短距離に3年分の努力と思いを込めて、構えた。
今日の大会で最後なんだ。
今日こそは――。
元々彰吾は、走るのが誰よりも早くて、いつも1位だった。
金メダルやトロフィーや表彰状なんかも部屋一面に飾ってある。
それなのに――。
彰吾は高校最初の陸上大会で2位だった。
こいつが現れたからだ。
表彰台の2位の位置に立つのも、見下されるのも、こんな屈辱を味わされたのも初めてだった。
その後の大会でもそれが定位置となった。
彰吾と同じ1位の座を離れたことがないというこいつに、ずっと執念を胸に走り続けてきた。
引き金が引かれ、走り出す。
半分走った地点で彰吾とこいつの互角で、他の奴らは視界に入っていない。
が、彰吾よりも少し前を走っている。ゴールまで何とか抜かさないと――。
ゴールまであと2メートル。
あ、もう、ダメ……。
「1位おめでとう、よく頑張ったね」
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