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僕はたまらず、「わけがわからない」と口にしていた。
それを聞いて、男が今度こそため息をつく。
「俺の方が、わけわからないっての」
それもそうか。
一晩で三回も強盗に入られているのだとすれば、わけのわからなさで言えば、間違いなく向こうに軍配が上がる。
納得しかけたところで、先ほどの三人目という単語が、頭の中でようやく咀嚼され始めた。
「待ってくれ。僕は本当に三人目なのか?」
「だから、そう言った」
「そんなこと、あるわけない」
「あんたがここに入ってきてるんだ、他に二人いてもおかしくはないだろう。防犯カメラの映像でも見せてやれば、納得するか?」
「いや、いい。悪かったよ」
謝ってしまってから、今のはおかしかったなと顔が赤くなる。
照れ笑いの強盗なんて、決まりが悪すぎる。マスクをしておいて本当によかった。
「そうしたら、ええと、僕は」
「大したものはないが、商品のひとつでも盗っていけよ」
男は、完全に自棄になっているようだった。
慌てて、要らないと両手を広げて見せる。
「もう通報はしたのか?」
「ここに警察がどかどかやってくるんじゃないかって、そういう心配か」
「いや、前に二人もきたのならと思って。そういえば、そうか。この場合って、捕まるのは僕になるのかな」
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