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隣の家の芝生は青い。
誰もが一度は聞いたことがあるであろう、ことわざである。
他人の物は何でもかんでも自分より良く見える、と言う意味だ。
てか、芝生ってどう見たって青じゃなくて緑だろう?
このことわざを聞くたびに誰にとでも無く一人つっこみを入れてしまう。
春麗らかな朝。
ハックショーン、とくしゃみが止まらない。
花粉症歴5年、15才の高校一年生。
人生生きていて常に付きまとう言葉、平凡と理不尽。
身長も体重も顔も成績も全て何もかも平凡。
あまりにも平凡過ぎる顔ゆえ、この時期が一番辛い。
入学、クラス替えなど、新生活を向かえるこの時期。
クラスのほとんどの人間が自分のことを認識してくれるのは夏休み前だ。
最悪、次の学年を向かえるまで自分の顔を覚えてくれないクラスメイトもいるぐらいだ。
「おい、鈴木」
そう、オレは名前まで平凡な鈴木。
「無視すんなよ」
次の瞬間、スクールバッグで背中を叩かれた。
「……、ああ、何だお前か……」
オレを叩いたスクバを左肩に乗せ、キラキラと輝く瞳でオレを見下ろす男。
そう彼こそが、『隣の芝生は青い』である。
さっきまで、誰の視線も感じなかったのに、こいつがオレの前に現れてから、行き交う学生徒たちの視線を集めてしまう。
高身長、スタイル抜群、少女漫画にでも出てきそうな王子ルックス。
成績も何もかもトップクラスで、常にオレを見下ろす存在でありながら、絶対にオレの事を見下したりしない。
オレの家の隣に住む幼馴染み。
天王寺 和也。
神様、隣の芝生は青いと言うことわざは僕のために作られたのですか?
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