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「鈴木、お前の背中って悲壮感に溢れてるよなー若いんだからもっとテキパキと動け」
天王寺が再びスクバで叩こうとするから、オレは慌てて避ける。
「何だ、お前、早く動けるじゃん」
くすっと小さく笑う、天王寺の笑顔。
くそー、イケメンの笑顔ってどうしてこんな破壊力あるんだ?
男のオレでも思わずドキドキしてしまう。
ほら、見てみろ、鼻血出して失神してる女子生徒も何人かいるぞ。
……、まぁ、それは言い過ぎだが、今の笑顔で少なくとも10人ちょいの女生徒の心をわしづかみにしたらしく、目をハート型にした女たちのラブラブ光線が肉眼でも見える気がする。それほど、猛烈な熱視線を瞬時に集める男、それがこいつ天王寺和也である。
「てか、天王寺、お前なんで、オレと同じ高校選んだんだよ、お前ならもっと上の高校選びたい放題だっただろう?」
そうだ、常に成績トップの天王寺なら県内有名進学高にでも余裕で入れたはずなのに、何故か第一志望はオレと同じのごくごく普通の都立高校だった。
「そんなの?分からない?お前と一緒にいたかったからだよ」
何?何?この台詞?
残念ながら、オレにそっちの気は無い。
無言のオレをつまんなそうに見つめ、
「まっ、そう言うのは冗談だけどさ。でも、幼稚園、小学校、中学校って一緒なんだから、このままずっと一緒でもいいだろう?」
いや、良くない。
断じて良くない。
お前が側にいるだけで、オレの平凡さに輪がかかり、余計に目立たなくなってしまうからだ。
神様、どうしてこんなに不公平なのですか?
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