17人が本棚に入れています
本棚に追加
あくまで『理想』について書いただけだと、当の本人は言うかもしれない。
だが、遺される側にしてみたらどうだ。
もし大事な人を失ったとしたら、できればその人の夢を叶えてあげたいと思うのが、人の人情というものだ。
しかし現実的には厳しいことも、中にはあるわけだ。
無駄に頭を悩ませた挙げ句、死のショックに加えて、『ああ、俺はあの人の願いを叶えてあげられないんだ……』――そんな悲しみに打ちひしがれる羽目になるなんて、誰だって御免だ。
だからエンディングノートを書くのなら、様々な視点を持った上で、それから現実的な事も考えた上で、慎重に書くべきなのだ。
それなのに、まったく俺の母ときたら、いつまでも夢見る少女みたいなことばかり言っていて、イヤになってしまう。
――そんな母からの電話があってから、数日後のことだった。
最初のコメントを投稿しよう!