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心臓が止まってもこの世界に存在している彼女。
その辛さは誰にもわからないことなのだろう。
鼓動が止まってから数年の月日が経った頃のことである。
「……………」
俺と同じように、ほとんど明かりのないビルの合間をさまよっていた。
両親も失くし人を避けて暮らしては、ついに家までも捨てた。
心臓が止まっていても生きているなんてそんな事を信じてくれる人間なんてほとんどいない。
人に避けられるなら自分から避けている方がましてあると彼女は考えたのだ。
「………っ!!」
そんな彼女は精神的にも体力的にも限界であった。
しかし、どれだけ肉体がボロボロになろうとも彼女に『死』というものは迎えにこない。
どれだけ回復したとしても『生』というのもやっては来ない。
目の前の視界は頻繁にぼやけて、踏み出す度に足は急に力が抜ける。
「なんで……私には…………」
止まってくれる心臓がないのか……。
すでに止まっている心臓は安らかな眠りに誘ってくれないのか。
彼女はずっと考えた。
拳を強く握りしめても、手首に指を当てても、胸に手を当てても振動はない。
しかし、それよりも嫌なことが彼女にはあった。
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