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「おっとっ!?」
とある男がふらふらな彼女を見つけた。
声をかけると風にさらわれてしまいそうな小さな声で「触らないで」とばかり言う。
彼女は男を避けることすらもできず、そのまま男の前まで歩みを進めると、突然崩れ落ちる。
男はそれを腕を伸ばして支えた。
触ってしまったのだ。
「さ………、触らないでっ!!」
ふらふらだったとは思えないほどに彼女は強く抵抗をする。
だが、男の腕から逃れられるほどの力ではなかった。
彼女は腕を掴んで爪を立てるが型が付くほどで傷は付かない。
「…………」
男は彼女を離さない。
無言で腕に爪を立てられても痛がりもせず、ただただその様子を見ていた。
「おい、何してんだ?さっさと帰還しないと………ってT・D?なんだその子は?」
「I・Cか。今にも倒れそうだったから助けようとしてるんだが、暴れてな」
「ふーん?私からだと少女を襲ってるようにしか見えないんだが?」
「勘弁してくれ!」
「はいはい、冗談冗談。私がつれ………て」
I・Cが彼女に手を伸ばそうとした時、彼女の手から腕を振りほどいてT・Dがそれを止めた。
「やめておけ。彼女にはさわらない方が方がいい」
これ以上余計に暴れてしまっては困ること、そして彼女にとってもI・Cにとっても『脈がない事』なんて知らない方がいいとT・Dは判断した。
「何かあったら防御を頼むぞI・C。拠点に連れて帰ろう」
彼女の絶望が、希望に変わった瞬間だった──。
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