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Episode.2 Anne: Noise Record
——何からお話しましょうか。
こうして改めて自分の過去を語るのはお恥ずかしいことです。それに自慢できるような過去ではありません。
私は六つもいかない頃に両親を事故で亡くしました。決して裕福と言えない家庭環境でしたが、両親と暮らせるだけで幸せでした。今思えば何て浅はかな考えだったのでしょう。
両親を亡くした私は引き取り手もなく、孤児院すら行けなかったのです。金のない私は家賃を払うことすら出来ず、家も失いました。そして、路上での貧しい生活が待っていたのです。
誰も拾ってくれるわけでもなく、壁を背に預け、茫然と町行く人々を眺めていました。
路上生活から一週間ばかり経つとお腹も減り、盗みを働きました。最初は露天に出ていた果物屋でした。
でも、上手く行かないことばかりです。
直ぐに警察に捕まり、釈放された私はさらに過酷な生活を強いられました。
たった一度——その一度の犯罪だけで周囲の目は変わり、何もしていないのに疑いの目線を向けられました。ちょっとでもお店の前を通りかかるだけで、捕まりました。
正直死にたいと思いました。
生きる希望すら失いかけていた私に彼女は現れました。それは地獄の底に舞い降りた天使のようでした。
大きく胸が開いた真っ赤なドレスを着、金銀財宝を纏ったその姿は金持ちでした。手には何百万もする動物の毛皮で出来たカバンを持っていました。
何故、彼女が掃き溜めにいるのか理解出来ませんでした。
彼女の目は品定めをするように私を嘗め回し、手を出してきたのです。
今でも彼女は私の尊敬する人です。名前は——エレニア・ローレン。
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