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(二〇一九年 二月十四日 十九時三十四分)
東京都杉並区●▲町-XXX。それは、閑静な住宅街の一軒家から始まった。
ダイニングテーブルの中心に立つ赤いアロマキャンドル。暖炉の炎はオレンジ色に輝き室内を温めていた。
キッチンからサラダを運んできた女が、暖炉前のソファで読書をしている男を呼ぶ。
「あなた、そろそろ食べるでしょ?」
「あぁ、そうだな。食べようか」
男は顎鬚を触りながらそう言って本を閉じ、ダイニングチェアに腰を下ろした。
高級そうなグラスにワインを注ぐ女。
「さぁ、乾杯しようか」
そう言って男が女に笑い掛けた瞬間、庭から草を掻き分けるような音が微かに聞こえてくる。
「んっ、今何か聞こえなかったか?」
男がそう尋ねると、確かにと言った表情で腰を上げた女がカーテンの方に近づいて行く勢いよく女がカーテンを開くと、芝生の広がる庭に白いワンピースを着た女が立ち尽くして居た。
ワンピースの女は庭の中心に立ち、窓ガラスに無表情な顔を向けている。
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