563人が本棚に入れています
本棚に追加
/1436ページ
「ええ、一応、高校生の時に剣道の全国大会で優勝しましたから」
「マジか!二ヶ月一緒に居るけど初耳やな。それなら剣道部補欠よりかは長い時間生き残る可能性は高いか」
大雅は拍手しながらそう言って、サトルの木刀を持つ。
「まず一つ言える事は、こんな棒切れじゃ簡単に折られて終わりや。俺はあいつらが金属バットで殴られても平然と立ち上がってくる瞬間を、この目で見た事あるからな」
大雅は眉間に皺を寄せて、追い込むような口調でサトルに告げる。
「別に俺は、この木刀で狂鳴人を倒そうなんて思ってないっすよ?とりあえず、攻撃を避ける為の三本目の腕にでもなればと思って持っていくだけです。逃げ足だけは自信あるんすよ……」
サトルはカバンに缶詰を入れながら、穏やかな笑顔で応える。
その時、四十代後半と思われるスキンヘッドの男性が近付いて来た。薄汚れた白シャツに茶色のチノパンが如何にもくたびれたサラリーマンといった雰囲気だ。
「あのぉ……君……東京に行くって本当かい?」
スキンヘッドの男は周囲を警戒しながら、小声でそう呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!