第一狂 狂乱の始マり

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第一狂 狂乱の始マり

(二〇二〇年六月十五日 深夜二時十八分) 闇の中で光るスマートフォンには、何度読み返したか解らないメッセージが表示されていた。濁った心とは正反対に光り続ける画面を虚ろな目で見つめながら、青年は大きな溜息を吐く。 【お兄ちゃん、助けて!私はまだ生きてる。場所は渋谷区にある総合病院のn】 妹から送られてきた打ち掛けのメッセージは青年を追い詰め、どうすることもできない焦燥感を抱かせる。 【どうした?】 【生きているのか?】 【頼むから返事をしてくれ】 その後、何度メッセージを送っても妹から既読は付かなかった。 いつからかメッセージを送る事を止めた青年は、妹を迎えに行く事を決意する。 青年の名は藤崎サトル。数ヶ月前までは普通に大学へ通う学生だった。 「絶対に迎えに行くからな……麻耶」 サトルは何度呟いたのか解らない独り言を口にすると共に、テレビで初めて報道された狂乱騒ぎを思い出していた――――。
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