563人が本棚に入れています
本棚に追加
/1436ページ
第一狂 狂乱の始マり
(二〇二〇年六月十五日 深夜二時十八分)
闇の中で光るスマートフォンには、何度読み返したか解らないメッセージが表示されていた。濁った心とは正反対に光り続ける画面を虚ろな目で見つめながら、青年は大きな溜息を吐く。
【お兄ちゃん、助けて!私はまだ生きてる。場所は渋谷区にある総合病院のn】
妹から送られてきた打ち掛けのメッセージは青年を追い詰め、どうすることもできない焦燥感を抱かせる。
【どうした?】
【生きているのか?】
【頼むから返事をしてくれ】
その後、何度メッセージを送っても妹から既読は付かなかった。
いつからかメッセージを送る事を止めた青年は、妹を迎えに行く事を決意する。
青年の名は藤崎サトル。数ヶ月前までは普通に大学へ通う学生だった。
「絶対に迎えに行くからな……麻耶」
サトルは何度呟いたのか解らない独り言を口にすると共に、テレビで初めて報道された狂乱騒ぎを思い出していた――――。
最初のコメントを投稿しよう!