第三狂 出発ノ時

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第三狂 出発ノ時

「あのぉ……君……東京に行くって本当かい?」 突然話しかけてきた男性に、目を丸くして手を止めるサトル。 「はい、明日の朝には出ようと思います。あなたは?」 サトルが言葉を返した瞬間、男性は膝をついて頭を下げる。 「こ、こんなことを他人の君に頼むのは情けない話なんだが……東京の秋葉原で私の娘が働いて居るんだ!出来たら、娘が生きているかどうかを確認して来てくれないか?」 「あんたなー、それは虫が良すぎる話なんちゃうか?」 サトルが口を開く前に、大雅が呆れた顔でスキンヘッドの男に詰め寄る。 「大雅さん、大丈夫です。あの……顔を上げてください。とりあえず、あなたの名前を聞かせて貰えませんか?俺は藤崎サトルって言います。出身は東京ですが、大阪の大学に通っているので、この近くのアパートで一人暮らしをしていました」 サトルは大雅に後ろへ下がるように合図し、スキンヘッド男の肩に手を置いて話し掛ける。スキンヘッドの男は唇をプルプル震わせながら頭を上げ、自己紹介を始める。
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