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第四狂 地上へノ扉
「大雅さん!」
サトルは声を弾ませ、背後から突然現れた大雅に顔を向ける。
「まぁ……アレや!社会にも出ていない青二才とハゲ散らかしたオッサンが気合い入れて地上へ行くのに、消防士やった俺が隠れ続けるのは情けないと思ってな。電気が止まったらどうせ此処から出なあかんようになるし」
大雅は口を尖らせ、頬をポリポリ掻きながらそう言った後、「よろしくな!」と言ってサトルの背中を勢いよく叩いた。
「痛いっすよ……。ってか大雅さんもまだ二十五でしょ?俺とあんまり変わらないじゃないっすか!」
「馬鹿野郎!社会人と大学生じゃ結構な差があるんや。顎鬚も生えてるしな」
サトルと大雅が楽しそうに会話をしていると、鈴村がボソッと呟く。
「私……ハゲ散らかして無いんですけど?ほら、綺麗に剃っていますし」
光り輝く頭を自らパシパシ叩きながら、不服そうな顔で睨んだ。サトルと大雅は顔を合わせて大笑いする。
「鈴村さん、すんません!俺、めっちゃ失礼な事言うた……。ってか、今から地獄のような世界に行くってのに、俺ら呑気過ぎへんか?」
そう言って再び笑った大雅は大きなリュックを背負い直し、自分の頬を両手で叩く。
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