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第五狂 初めテの戦闘
『まともに戦っても勝てない……。考えるんだ……ここから逃げる方法を』
サトルは黒眼を左右に動かし、使えるモノが無いか探し始める。しかし、腐ったリンゴやミカン、かつては売り物だった女性物の洋服やスカートが落ちているだけで、逃げる為に使えそうなモノは何処にも見当たらない。
『とりあえず……戦うしかない』
使えるモノが周りに落ちていない事に落胆しながらも、サトルは焦点の合わない狂鳴人の黒眼に己の視線を合わせた。
『こんな目じゃ……いつ攻撃を仕掛けてくるかも読めない……。こっちから仕掛けるしかないな』
サトルがそんなことを考えながら木刀を少し傾けた瞬間、狂鳴人は黒眼をグルンと一周させながら飛び掛かってくる。
「ぐっ……」
振り下ろされる狂鳴人の腕を、サトルは横跳びで避ける。すぐに体勢を立て直し、サトルは木刀を力いっぱい狂鳴人の後頭部に叩きこんだ。
叩き落とされた蠅のように、ビタンと地面に這いつくばる狂鳴人。サトルは畳み掛けるように木刀を何度も振り下ろす。
狂鳴人の頭部に木刀がめり込む音が商店街に響く。
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