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プロローグ
町が燃えていた。
あたりには建物の瓦礫が散乱している。
その瓦礫を踏みつけながら人々は炎の中を無我夢中で走っていた。黒い姿をした怪物から逃れようと。
男は荷物を担ぎ、女は子供を連れ、老人は遅れをとりながらも必死で生きようとしていた。
ただし、例外の人もいる。逃げている人々を護衛するため武器を取り闘う者もいた。しかしその者たちは無念にもはかなく散っていった。
だが、大人たちが無残にも殺されている間一人の少年は前線で闘い続けていた。たった一人で。
その少年の足元には少年の家族らしき亡骸が三つ転がっていた。少年はそれを守るように手に持った包丁を次々に襲い掛かってくる怪物に刺していった。
少年の目は光を灯しておらず、炎の光も映っていなかった。
「殺す、殺す、殺す・・・・」
少年の口からはこの言葉以外発せられていない。
少年の持っていた包丁が砕け散った。耐久がなくなったのだろう。
それと同時に空から黒い姿をした巨大な鳥が舞い降りてきた。
『ギャャャャャャャャ!』
その鳥は四本ある足をしっかりと地面につけ、六つもある羽を大きく広げ、少年を威嚇した。
少年は怯えもせず叫んだ。
「お前らを滅ぼしてやる!」
少年は側にあった鉄の棒を持って立ち上がり、怪物に襲い掛かった。
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