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独占欲
夕方の巡り喫茶はぐるまは客が多い。はぐるまのマスターである海野健次の恋人であり、看板娘でもある白浪奇子が出勤するからだ。
「お、白浪ちゃん今からかい?」
20代後半の男性は、人懐こそうな笑顔で奇子に声をかける。
「はい、そうですよ」
「じゃあ追加注文しちゃおうかな。チョコパウンドケーキひとつちょうだい」
「ありがとうございます」
奇子は伝票に追加注文を書き足した。
「そういえばこの前おすすめしてくれた本面白かったよ。他に面白そうなのあったら教えて」
「はい、分かりました」
奇子は一礼すると、厨房に入る。
「健次さん、3番カウンターのお客様が追加注文で……」
「こっち来い……」
海野はしかめっ面で奇子の手を引いて、物陰に隠れる。
「け、健次さん?」
戸惑う奇子の首筋にキスが落とされる。
「何を……」
奇子は顔を真っ赤にして海野を見上げる。
「首筋にするキスの意味は知ってるか?」
「いえ、知らないです……」
「執着。お前が他の男と話しているところは見たくねぇ」
今度は唇にキスをした。海野は奇子の手から伝票を取ると、仕事に戻る。
「嫉妬……してくれたんだよね……?」
彼女の頬は赤く染った。
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