♯6 アザゼル・ハイド

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 ただちに、スチュアートがたしなめる。が、ブラッドリーは悠々として、クレイグに小首を傾げて見せた。 「ご覧いただいたでしょう。使用人らがすくみあがっている。もしも屋敷に入ったというのなら、誰もが知るところだ」 「しかし、夜ですぞ。ミスター・パーカーいかがかな」クレイグは引き下がらない。 「ええわたくしは……」しどろもどろになっている。見かねたブラッドリーが間に入ろうとする。が、クレイグに阻止される。  ブラッドリーの拳に怒りが込められていく。下ろした両の手はかたく握りしめられていた。 「どうですか、ミスター・パーカー」最後通告のような響きがあった。 「そのようなものは」頭を左右にぶるぶる振った。「屋敷に、そのようなものはおりません」 「この屋敷に(かくま)っているということはございませんか?」クレイグが食い下がる。 「断じてございません」スチュアートは、これで話はおしまいだというように、(りき)んだ口調で言い切った。 「そうね」うなずきながらペギーが助勢(じょせい)する。「食事がいるでしょう。そのような男だったらば、食材がもっといるだろうし……」 「そうですわ」ルーシーも加わる。「洗濯も必要でしょうし、屋敷内をうろついていたならすぐわかるでしょう?」  クレイグは、そこでようやく満足できたらしく、はははと声高に笑った。 「確かに。では、彼がハイド(隠れる男)ならば――シーク(探す男)となろう」  和やかな空気が広がるが、どこかかたさがある。 「何か、おかしなことがあれば、お知らせください――」クレイグは句読点の代わりにうんうんとうなずきながら言った。「さてと、ドクター・ブレナン、わたしはそろそろ失礼するとします。会えてなによりでした。見送りはけっこう」
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