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ただちに、スチュアートがたしなめる。が、ブラッドリーは悠々として、クレイグに小首を傾げて見せた。
「ご覧いただいたでしょう。使用人らがすくみあがっている。もしも屋敷に入ったというのなら、誰もが知るところだ」
「しかし、夜ですぞ。ミスター・パーカーいかがかな」クレイグは引き下がらない。
「ええわたくしは……」しどろもどろになっている。見かねたブラッドリーが間に入ろうとする。が、クレイグに阻止される。
ブラッドリーの拳に怒りが込められていく。下ろした両の手はかたく握りしめられていた。
「どうですか、ミスター・パーカー」最後通告のような響きがあった。
「そのようなものは」頭を左右にぶるぶる振った。「屋敷に、そのようなものはおりません」
「この屋敷に匿っているということはございませんか?」クレイグが食い下がる。
「断じてございません」スチュアートは、これで話はおしまいだというように、力んだ口調で言い切った。
「そうね」うなずきながらペギーが助勢する。「食事がいるでしょう。そのような男だったらば、食材がもっといるだろうし……」
「そうですわ」ルーシーも加わる。「洗濯も必要でしょうし、屋敷内をうろついていたならすぐわかるでしょう?」
クレイグは、そこでようやく満足できたらしく、はははと声高に笑った。
「確かに。では、彼がハイド(隠れる男)ならば――シーク(探す男)となろう」
和やかな空気が広がるが、どこかかたさがある。
「何か、おかしなことがあれば、お知らせください――」クレイグは句読点の代わりにうんうんとうなずきながら言った。「さてと、ドクター・ブレナン、わたしはそろそろ失礼するとします。会えてなによりでした。見送りはけっこう」
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