♯6 アザゼル・ハイド

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 スチュアートも同様だった。「ええああ、フォースターさま」  二人の心もとない様子にふふんと笑って、デリックは意味ありげにブラッドリーへ視線をなげかける。「では」 「ああ」まるで暗黙のうちに意志疎通を(はか)っているようだった。  デリックが去ってすぐ、スチュアートがブラッドリーにつめよった。「旦那様――」  だがブラッドリーはスチュアートとは対照的に、いたって静穏(せいおん)な胸の内を表すように無表情を装っている。 「もう明るみに出るのは、時間の問題でございます」スチュアートの声が震えている。 「わかっている」ブラッドリーが辛抱強くこたえる。 「アザゼル・ハイドを家に招き入れるのは限界がございます」スチュアートは距離を縮める。「彼は、研究室にいるのですか? 夜な夜なおかしな声がする気もいたします」 「わかっている」ブラッドリーはただそれだけを呟いた。
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