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スチュアートかもしれない。こんな遅い時間に出くわしたら、どうなるか安易に結末が考えられた。人影がゆっくりとこちらへやってくる。
スチュアートではないとわかったのは、数歩先に大きな大きな……
見るも恐ろしい――
――夜な夜な、不気味な、それはもう、見るも恐ろしい男がうろついているというじゃないですか。このお宅へ入ったと聞いたものですから――
――アザゼル・ハイドと名乗ったらしい――
耳のそばで、脳裏で、クレイグの声が木霊している錯覚に陥る。
まさか!
暗がりに、獣のごとき隆々とした筋骨が濃い輪郭を描き、漆黒の塊がゆったりと迫ってくる。ぜいぜいと荒い息を繰り返しながら。どこかで狩りを終えた猛獣のように。
ジュリアは口を大きく開けて叫び声を上げようとしたが、極度の緊張と驚きで声すら出なかった。双眸を見開き、わずかに後退りした、そのとき、ジュリアは顔をしかめた。床がかすかにきしむ。その音が、相手にこちらの存在を気づかせた。
相手がとまる。緊張感が数段引き上げられ、恐怖と不安で足が震える。ジュリアは声をもらさないように、呼吸さえも注意深く、口へ両手をおさえつけた。刹那――
相手がずんずんと近づいてくる。ああ――
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