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どれくらいの時間が過ぎたのかはわからない。恐怖に打ちのめされた心を立て直すにしても時間がかかる。身も心も疲れきってしまった。
このままでは埒が明かない。書斎で寝るにしても、また相手がごっそりと起きて、襲われてはかなわない。死――
いつもそばにある、死。常にこの街のどこかで、芥同然にさらされている、死。
それが、ついに我が身に起こるかもしれない。
けれど、死んでなんていられない。ケリーはどうする? 彼女は一人さみしく現実社会から隔離され、ひっそりと生きているではないか。誰が彼女の面倒を看る? 直接は施設の者だが、それだけではない。いつかはわからない。儚い希望だろう。けれど、ケリーの笑顔が見られるまでは、死ねない。
ジュリアは思い立って、扉をかすかに開けようとした。だが微動だにしない。全身の力を手と腕に込めて、開けようとする。片手が入るくらい開いた。ジュリアは扉を掴んで、さらに開こうとする。あと少し――
そこからが早かった。相手がとうとう廊下の上に横たわったのだろう、ドサッと物音がして、一気に扉が開かれ、ジュリアは驚愕する。
またもや、口を開けて無言の悲鳴を上げた。
相手は、ブラッドリー・B・ブレナン、そのひとだった。
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