97人が本棚に入れています
本棚に追加
/212ページ
「ドクター・ブレナン」ジュリアは彼の名を呼ぶ。
確かめたいことがあった。
「あなたはどうですか」ジュリアはたずねる。
「あなたは、なぜ、そのような冷たい仮面をつけることを選んだのですか」
直ちにブラッドリーの眉間にしわが刻まれる。彼は顔を背けた。このような具体的な内容を彼に直接たずねるものは、これまで誰もいなかった。友人のデリックでさえ。
彼女は知っている。そう彼は悟った。
ブラッドリーは無言を貫いている。
だが、次の瞬間、気持ちを変えるように鋭く息を吐きだし、そしてブラッドリーは彼女を片手で引き寄せ、抱きしめた。それが返答であるかのように、彼は行動で示す。ジュリアは受け入れた。彼の肩の上でちょうど顎が乗る。
「あなたは優しいのに」ジュリアのささやきを聞いてから、彼は腕に力を込めて、さらにきつく抱きしめた。それが返答だというように。
彼女の存在が自分の救いとなっていた。そのことに、いまさら気づいた。
最初のコメントを投稿しよう!