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彼に指摘されたその言葉に、紹介がまだだったと気付き淡々と彼等を紹介していく若葉。そして、碧綺は男の言った通り鸞だと言う。 「(から)の国からやって来た所、偶然私共と出会いまして。そしたらやけに懐かれてしまい」 そして今に至ると語った彼女は、その鸞である碧綺に(くちばし)で頬擦りされ、擽ったそうに小さく笑っている。確かに、かなりの度合いで懐かれているようだ。 「だが何故、唐の国からやって来たのだ、態々。神鳥とも呼ばれている者が」 訝しげた視線を受け、それに気づいた碧綺が口を開く。 「少々喧しくも目障りな(カン)がいた故、面倒になって逃げ回っていた所、気付けばこの地に踏み入っていた」 そして、とりあえず休息を取る為に羽を休めようと山へ降り立ったと言う。 「其処が、偶然にも主様の屋敷付近の地で"運命的"な出会いを果たしただけだ」 『ぬしさま、ぬしさま』と未だに頬擦りをし続ける碧綺。運命という部分だけやけに強調されていたのは、果たして幻聴だろうか。 頬擦りそれ続け、若葉の亜麻色の糸が乱れ始めている。それでも彼女は気にしていないのか、されるがままで笑顔のままだ。 「鳥科と犬科って相性悪いんだよねぇ」 「……私、山海経(せんがいきょう)を読んでる気分です…」 「…ああ、私もだ」 呑気に呟く仙華を尻目に、二人は唖然と口を開いていた。 「して、そこな犬は何だ」 へっ?と、恍けた声を発したのは腹の毛繕いを必死にしていた仙華だ。嗚呼、なんとも滑稽な姿か。 「仙華はとある術により…。今、戻る為にその術者を見つけている最中なのでます。怪異を当たりながら」 先程より深刻な表情で、仙華を抱きかかえ告げる若葉。そんな彼女に、男が素っ頓狂な声をかける。 否、人の姿になら戻れるぞ、と。 「…………………え」 若葉と仙華と癒月の声が見事に重なった。
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