第一部:見知らぬ同居人

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 昨晩、触れて怪我をしたガーデンフェンスを今度は足でそっと押してみる。カチャリと静かな音がし、それは簡単に開く事が出来た。 「あ?」  しかし、そのフェンスから何かが一瞬見えて俺は入るのをやめる。  もう一度慎重にガーデンフェンスを足で閉じる。そして、再度足で押す。  フェンスが開くと同時に、ちょうど手を置くような部分からナイフが飛びでてきた。板には微妙な切れ込みがあり、この扉を開けると同時に飛び出てくるしかけになっている。しかも、動かしている時だけ飛び出て、開ききるとしっかり収まるように巧妙にできている。  それはどう見ても人を傷つけるための悪意ある罠だ。そのナイフは錆ており、既に犠牲者が出ている事を告げている。 「昨日怪我したのはこれか。でもなんでこんな細工があるんだ?」  あえてガーデンフェンスを開けたまま物音を立てないように家に近づいた。  玄関扉を見れば、それは少しだけ開いている。  隙間から内部を覗けば動いている人も光もない。扉を指で押せば、ガーデンフェンスと同じようにノブから小さなナイフが顔を覗かせる。
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