手紙

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手紙

 この手紙は俺の息子であるお前が無事成人を迎えた日に贈る。  突然乳母をなくし、お前はひどく傷つき混乱している。「自分を嫌いになったからいなくなったんだ」とお前はライラに言っていたがそうではない。彼女の失踪には理由がある。しかし、その理由を伝えるのには長い長い説明が必要だ。  この手紙が一体何枚必要になるかわからない。だが、お前に、この区画の人間に黙っていたことを伝えよう。  北区は豊かな場所だった。何一つ不自由なことなんてなかった。  他の区画と……とくに南区と違うところは信仰の厚さだった。それが故に北区の人間は過ちをおかした。  天使を降臨させようとした。  しかし、準備不十分がゆえにその天使は……。
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