第一部:見知らぬ同居人

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 眼を見開き、涎を垂らし、鼻血を流し、腕や足を痙攣させ、顔中の筋肉を引きつらせ死んだ。生き延びた者は天使になろうとゾンビのように北区を徘徊し……。  北区に住む住人の大半がそのような状態に陥った。そのおかげで、今まで住んでいた場所は地獄へと変わった。  奇跡的に光を浴びずに生き延びた者は中央区に逃げ、ある者は不良者に、ある者は体を売り、ある者は天使と戦う『何でも屋』になった。  北区での天使降臨も地獄であったが、今この状況も俺にとって地獄だ。 「家賃! いつになったら払ってくれるんだ? なぁ、ファイド。お前はガキの頃から真面目だった。だから、今も真面目だと俺はそう信じてたんだぜ?!」  男の怒号と店の扉を叩く音が聞こえる。  店の中でぼんやりしていた俺はその音に驚いて椅子から転げそうになる。扉に近寄るのはやめてかわりに大きく息を吸う。 「仕事がこなきゃ金は作れねぇ。それに家賃は払ったはずだ! 金を借りた覚えがある!」  そう叫べば、扉は強く叩かれた。 「それが足りねぇっつってんだよ。なにが何でも屋の『DOGHOUSE』だ。働く場所は北区以外だと? そんなんでよく中央区にいられんな? やっぱりコネは強いなクソガキ!」
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