第一部:見知らぬ同居人

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 2  夜。  塗料材の放置ゴミ撤去という子供にも出来そうな仕事を終え、暗い道を歩く。  次の依頼場所は、今朝情報屋が言っていた南区寄りの西区だ。  高級住宅街に近い事もあってその付近の景観はいい。  中央区とは違ってきつい体臭の人間が道路で寝転がっている事も、全裸に近い女が建物の隙間から誘ってくる事もない。ゴミもなければ、それを漁るガキの姿もない。明かりの点いた洒落た電灯が均等に並んでいる。 「ここで本当に幽霊騒ぎか?」  人の気配が周囲に無いのは、今が夜中の三時だからだ。家の灯りはついておらず、虫さえ鳴いていない。  そんな中、二つの光が見えた。青白い発行体は俺の前方をピョンピョンと跳ねながら動き何かを言っている《﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅》。奇妙な光の位置は低く丁度俺の足首より数センチ上といったところだろうか。その二つの光は、交互に動き跳ねるように遠ざかり始める。 「待て!」
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