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数十年ぶりに訪れた村は、懐かしさよりも不気味な感じを受けた。
家屋は軒並みボロボロに朽ちて、植物に侵略されていた。
「ここはかつて、人が生活を営んでいたんですよね・・・」
ハナさんは感慨深げに言った。
「ええまあ。しかし緑の匂いにむせ返りそうですね。マイナスイオンたくさんありそう」
「あ、マルさん。あれ、あそこ!お寺じゃないですか?」
ハナさんの指差す方向に、山姥の住処になってるような廃寺が見えた。
ふと、記憶が甦った。
「子供の頃、あの寺で遊んだ記憶があります!その時、住職さんがやたらデーデーの話をしてきたような・・・」
二人は寺に向かい歩き出した。
「マルさん、オンモラキを知っていますか?」
「いえ・・・何ですかそれ?」
「オンモラキは生臭坊主の前に姿を現す魔物です。いいかげんな供養をすると出てくるみたいです。身体は鳥、顔は鬼のようだと云われています」
「もろ、デーデーじゃないですか」
その時、鳥が嫌な声で鳴きながら、頭上を飛び去った。
「びっくりした・・・。ん、ハナさん動画撮ってるんですか?映ってます?」
ハナさんはスマホを手にしながらうなずいた。
「ええ。ちゃんと録画されてたらいいんですけど。お寺の横にお墓がいくつかありますね。誰ももう、お参りに来ないんでしょうね」
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