禁区のオンモラキ

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「実は、道中お話した、廃村マニアは私の兄で、鬼沼津村に行った六日後に急性心不全で亡くなりました」 「ええ!?」  ハナさんはカバンからA4サイズの用紙を取り出した。 「これは兄が亡くなる前に、私宛に送られてきたメールをプリントしたものです。どうぞ、お読みください」  クリップで留められた用紙を受け取った。気を静めるためにコーヒーを一口飲み、文字に目を通してみる。その内容は・・・・・  ハナ、俺はもうじき死ぬ。 鬼沼津村に行った日から毎晩、鬼の顔した鳥が夢に出てくる。しかもデカイ。 一日ごとに身体の一部が食われるんだ。右足、左足、右手、左手、胴体まで食べられた。残りは頭部だ。夢の中で食べられた部位は、現実世界では、どす黒く変色している。  こんな状態で仕事に行けない。まぁ、もうじき死ぬからどうでもいいが・・・。  鬼沼津村ははるか昔、人柱がその村民から選出され、忌村(いみむら)と云われたそうだ。年に数回、生きたまま埋められたり、橋の柱にくくり付けられたというんだ。人柱にされた人らの供養をきっちりすれば問題ないが、それを怠ると祟るんだと。オンモラキという魔物に姿を変えて・・・。  俺はただの怪談話と思い、村に行った。 しかし・・・撮った写真はすべて真っ黒だし夢にオンモラキが出てくる。  あの村に祟られずに行くには、村出身の者に同行してもらうのが必須だということだが、廃村になってから大分経つのに、無理な話だよな。  もはや後の祭りだ。ハナ、俺が死んだら、俺のノートパソコンはお前が貰ってくれな。
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