俺の話

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 *  水端美樹――とは、俺の初恋の人で、高校時代の部活の、一つ上の先輩だ。  俺から告白して、一年付き合って、彼女の受験をきっかけに、俺が寂しさに耐えられなくなって別れた。それから、俺は一浪して大学に入り、彼女は先に社会人二年目を送っている。  大学に入学したころを境に、彼女のメアド変更一斉メールでメッセージIDを入手し、それからは季節の変わり目と、彼女の誕生日に、なぜか忘れずメッセージを送った。  彼女の傷口を、ずっと生々しく維持するような行為だろう。  返信もずっとそっけなく、儀礼的なもので、一、二通やり取りが続いてすぐに途切れてしまう。けれど、忘れずに送っている。  その傍ら、付き合っている人がいなかったわけじゃない。彼女と別れてから、告白してくれた子とそのあとすぐに付き合った。それは部活の同級生だったが、馬が合わなくて、半年持たずに別れ、今度はまた別の女子に告白されて、一年ぐらい。卒業を機に、会うこともなくなった。  彼女と別れてすぐに付き合った子と一緒にいるのを、彼女に見られてしまったことも、もちろんある。辛そうな、今にも泣きだしそうな顔が、夕日の逆光で暗かったはずなのに、くっきりと思い出せる。  そのあとに付き合った子とバッタリ会ったときは、なんだか蔑んだように一瞥しただけだったけど。すぐに視線をそらせて、でも速足で。良く似合った夏のさわやかでふわっとして、解けてしまいそうな装いが、制服姿の人をかき分けて去っていくのを、見惚れていた。  そんなことを、覚えている。
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