ちょっと長いプロローグ

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アッシュブラウンでこだわりのなさそうな無造作にセットされた髪、顎のラインが綺麗な顔立ち、今は座っているけれど立てばいづきより頭一個分背が高い。まるで男性モデルのような容姿を持ちあわせているこの男は平沢悠太。 いづきとは幼稚園の頃からの幼馴染みだ。今は同じ大学に通っているが、悠太は経済学部ではなく法学部を選択している。 「お待たせ」 「僕も今ついたところだし大丈夫だよ」 模範解答のような完璧な返事だった。そんな悠太を前にいづきは口元の綻びが隠せなくなる。元々上手に隠せていなかったが、これは今に始まったことではない。 二人はただの幼馴染みではなく、性別の壁を越えた恋人同士。もちろん公にはしていないけれど。 高校二年の秋頃から付きあうことになりそれから一年ちょっと経っているが、いづきの悠太に対する好きという熱が冷める様子はなかった。 それはきっと悠太も同じだろう。 「講義はどんな感じだった?」 「うーん、なんか眠くなっちゃって」 寝てはいないけど、と笑いながら鞄からお弁当を取りだす。悠太はまだ手をつけてはいないが、すでにテーブルにお弁当を広げていた。 二人が使っているお弁当箱は色違いだった。 蓋を開けておかずをチェックする。 ウィンナーに卵焼き、ポテトサラダなど色とりどりのおかずが入っていた。いづきは「おいしそう!」と嬉しそうに言葉をもらす。 「いただきまーす」 「いただきます」 そう言って手を合わせたあと、早速卵焼きをひとつ口に放りこむ。少し甘めの卵焼き。いづきの好みの味だ。 んー、と幸せそうにそれを咀嚼してごくんと飲みこんだ。 「おいしい! 今日もありがとう。今度は俺がお弁当作るよ」 「いいよ、べつに。いづきは朝起きられないでしょ」 「う……ま、まあ」 悠太は講義のある日は毎朝二人分のお弁当を用意している。そして今の会話……。そう、二人は大学生活スタートと共に二人暮らしを始めた。 大学が地元より少し離れた場所にあり実家から通うのは厳しいという話が出たとき、家賃も半分で済むし二人で暮らしてみようということになったのだ。
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