第10章

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「おお」 ぷに、と肉球に触れた悠太の第一声がそれである。どうやらいづきのプレゼンに間違いはなかったらしい。ひたすら肉球を揉んでいる。 「どう? 元気出た?」 「実家の猫が恋しくなってきた」 「……今度の休み帰るか」 年末に帰ったばかりだけど。大学から距離があるとはいえ、帰ろうと思えばすぐに帰ることができる。特に用がなくても実家に帰ることがこれまでに何度かあった。 金銭的にもルール的にも、ここで猫を飼うわけにはいかないので定期的に会いにいくしかないようだ。 「悠太、お土産嬉しい?」 「うん。ありがとう」 「どういたしまして。……あ、そうだ」 とりあえず今日あった出来事を報告しようと思った。塩貝に会ったこと、その塩貝を須藤が撃退してくれたこと。そして須藤との絆が深まったことも。もちろん須藤の過去の話までは伝えていない。こればかりは勝手に話すものじゃないと判断したから。 「まあ、そんなこんなでいろいろあったからさ。過去のことは忘れて、悠太も須藤さんと友だちになろうよ」 「ええー」 「俺のこと変態パパ活ストーカー弁護士から助けてくれたんだぞ?」 「すごい肩書き」 須藤がどうこうより、塩貝の話を聞くだけでもやもやする。悠太は一度も塩貝からいづきを救えていない自分に、少し嫌気が差してしまったようだ。 本当なら自分が助けたかったのに、よりによって須藤にいいところを持っていかれるとは。 友だちになるどころか、敵対心を持ってしまう。 「だから今度は三人で遊びにいこうな!」 「……いづきがいいならいいけど」 いづきがここまで心を開いているなら、強く否定はしない。好きじゃないことに変わりはないけれど。 「今度は僕が助けるからね」 「うん?」
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