カクテル言葉に翻弄される件

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水曜日、いつものようにameno(アメーノ)の扉を潜る。 「おはようございます。」 「お。おはよう。今日は早いね?」 今日もマスターはカッコいい。 「はい。ちょっと確かめたい事があって。」 「何?」 「あの。(株)春と秋って、七尾所長と雨野さんの会社なんですか?」 「そうだよ。言ってなかった?」 「はい。ちゃんと聞いてませんでした。七尾所長が社長なんですか?」 「そうなるね。代表取締役だから。」 「はぁ。やっぱりそうなるのか… オレ、失礼な事してませんかね? 」 「え? 何で? 何か心当たりあるの? 」 「同じビルのただのお隣さんだと思ってたから… 普通にしちゃってたなって。」 「君、面白い事言うね。普通にしてたなら良いじゃない。何か問題ある? 僕も特別扱いなんてしてないよ? 」 「はぁ。そうでしょうか。社長として扱わない失礼な奴だと思われてるんじゃ。」 「そこは気にしなくて良い。七尾さんはそんな事望んでないよ。君の事、爽やかな好青年だと褒めてたくらいだ。」 「えっ⁈ そうなんですか⁈ 」 「うん。 そんなに気になるなら今日来た時に話してみたら良いよ。」 「はぁ… 」 「はい。今日のおススメ。しっかり食べて元気出して。今日は、デザートにアップルパイも付けてあげよう(笑)」 「ありがとう御座います。頂きます!」 今日のおススメは、チキンのトマト煮。 トマトとハーブの香りが食欲をそそる。 お肉は、ホロホロに柔らかく、トマトの酸味と甘みが効いていて、とても美味しい。 「美味しいです。使われているハーブは何ですか? 」 「バジルとオレガノを中心に、生のパセリ。あとは、ほんの少し、コリアンダーとシナモンが入ってる。」 「へえー。どのハーブがどの味か分からないけど、美味しい事は確かです。」 「あー。そうか。 今度、それぞれのハーブで作ったものを試食してもらおうか。ジェノベーゼあたりから順にね。」 「ジェノベーゼ? 」 「バジルのソースで作ったパスタだよ。」 「なんだか美味そう。宜しくお願いします。」
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