タンカレートニックに涙が入ってしまった件

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4時55分。 外看板を出していたら、森國社長がやって来た。 いつもより、随分と早い。 「あれ?森國社長。どうしたんですか?」 「ん? 今日、カクテルの練習するって言ってたろ? 混み合う時間を避けた方が良いかなぁと思ってね。 あれ? どうした? 」 「なんでもないですよ。せっかく来て頂いたのに、… 今日はあまり飲めないかもしれません。取り敢えず、中にどうぞ。」 いつものように、お水とおしぼりを出す。 「今日のマスターとの練習では、何を作ったんだい? 」 「ジントニックです。」 「なら、それを貰おうか。」 「まだ、合格貰ってないです。」 「いいよ。今の旬が作ったのが飲みたいんだ。」 「はい。かしこまりました。」 「オーダーです。ジントニックです。オレが作るように言われたんですが、どうしましょう?」 「森國社長でしょ? やってごらん? ステアの回数に気をつけて。」 「はい。」 教わった事を思い出し、自分で書いたメモを見る。 何度も見た、マスターの指先をまぶたの裏に映し出す。 タンカレーを冷凍庫から出し、ギクシャクしながらも何とか出来た。 マスターに味見をしてもらう。 「初めてにしては上出来じゃない? お出しして良いよ。」 「はい。行ってきます。」
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