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カウンターに行くと、森國社長が微笑んでいた。
なんとも言えない笑顔で。
慈愛に満ちた、子供を見るような、そんな目で。
「旬。… … 春日さんと、マスターの関係に気づいたの? 」
「えっ⁈ 」
気づかれた…
気づいた事に、気づかれた…
どうしよう。
視界が滲む。
今はダメなのに…
「旬。 我慢しなくて良い。」
一気に溢れた。
雫が一粒、ジントニックに入ってしまった。
それを、森國社長は受け取り、一口飲んだ。
「うん。美味い。上出来だよ!」
森國社長の顔を見たら、瞳の水は決壊し、更に止まらなくなってしまった。
「旬。今日は帰ろ。着替えておいで。」
そういうと、森國社長は、厨房の方へ顔を出した。
「マスター、今日これから、旬の事預かっても良い? カクテルバーに連れて行きたいんだ。僕も、次の日が休みじゃないと、付き合えないしね。」
「そうしてくれると助かります。僕も店が有るんで、中々他の店に連れてってやれなくて。」
上がって良いよと、手で合図される。
「よかった。ホールどうする? 春日さんに連絡しておく? 」
「いえ。 小雨の月曜日ですから、さほどでもないでしょう。 … あの。… 旬の事、宜しくお願いします。」
「マスター。気づいてたんだ。」
「そりゃ気づくでしょ? あれだけグイグイ来られたら。」
「気づかないフリでやり過ごしてた?」
「タイミングを見て話そうと思ってたんです。でも、それで辞められちゃうのも寂しいなって思う位には可愛くなってて… 正直、困ってました。」
「そか。じゃあ、旬の事は僕が貰っても問題ないよね?」
「え? こないだのカクテル、やっぱりマジなヤツだったんですか? 」
「ははっ。 そうかもね。」
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