1160人が本棚に入れています
本棚に追加
アパートに帰ってから、久々にスーツに袖を通してみた。
なんだか、着られているみたいだな、と鏡を見て独り言ちる。
インターホンが鳴った。
おそらく、朔だ。
テレビカメラを確認すると、髪を手櫛で整えている朔が写っていた。
いつも、お洒落な朔らしい仕草に思わず微笑む。
「どうぞ。」
ロックを解除してやる。
間も無く、ドアホンが鳴り、玄関ドアを開けてみると、何やら沢山荷物を持った朔が笑顔で佇んでいた。
「お疲れ様。 合鍵渡してるんだから、勝手に入って来れば良いのに。」
「そう? でも、いきなりドアが開いたら怖くない? 来てもらいたくないタイミングも有るかも知れないし… 。」
「怖くないよ。勝手に入って来れるのは朔しか居ないんだから。それに、来てもらいたくないタイミングってどんな? 浮気とか? そんなのないよ。 」
「そっか。 ありがとう。ところでどうしたの? スーツなんか着て。」
「amenoのパーティーでスーツ着るだろ? それで久々に、着れるかどうか試してみてた。」
「あぁ。マスターから聞いた? その事なんだけど、ちょっとお願いがあるんだ。」
「なに? 改まって。」
「こんな事言うと、また旬に怒られそうなんだけど… 怒らないで聞いてくれる?」
「内容による… 」
オレが怒るようなおかしな事を言うのかと思い、横目で睨んでおく。
「待って。言う前から怒らないでよ。。」
「だー、かー、らー、」
「言う!言う! その日着るスーツは僕にプレゼントさせて欲しいんだ!」
「あ、ホント? 就活用だったから、地味なのかな?って迷ってたんだ。マスターも、森國社長に見たたて貰えって言ってたし。」
最初のコメントを投稿しよう!