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火曜日の午後、朔の行きつけの仕立て屋へ来ていた。
首の周りやら、腕やら、あちこち採寸され、沢山の生地を胸に当てて、鏡の前に立たされている。
店の人と、朔との間で、専門用語が飛交い、オレにはちんぷんかんぷんで、為すがままだ。
「生地は、こっちとこっち。身体が筋肉質だからね、全てナチュラルショルダーでいい。あと、この生地のスーツは、ラペルは細めで、コージは少し下げて欲しいんだ。それから、ラペルホールだけど、ブルーの糸で仕上げて。あ、あと、チェンジポケットを付けて欲しい。パンツは、太腿の筋肉が張ってるから、ワンプリーツ入れて、モーニングカットで。他の3着はダブルで4センチかな。」
「? 朔? 気のせいかもだけど、4着になってない? 」
「うん? ビジネス用が3着に、フォーマル用が1着になっちゃった。だって、パーティーにビジネス用だとおかしいだろ? それに、こらから友達の結婚式にも呼ばれるようになるよ。」
「うーん。」
「そんな、難しい顔しない! 悪いようにはしないから、ここは僕に任せて。」
ニッコリと微笑まれると、何も言えなくなってしまう。
ワイシャツもオーダーするらしい事に驚いたが、ここは朔の贔屓の店だ。
大人しくしておいた方が良いだろう。
それから、ネクタイやベルトを選んだ後、仮縫いなどのフィッテングの日程を決めて、その店を後にした。
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