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「ねえ、朔? どうして、父さんも母さんも、姉ちゃんまで来てんのさ。」
「そりゃ、お祝いだからだよ。」
「そうじゃなくて、オレにプロポーズする前に、実家へ行ったのか? 」
「ん? あれ? そういう事になる? … でも、ベットで、『結婚したい』って言ったら、『オレも』って言ってくれたから… もう、舞い上がっちゃって、あの次の夜、早速、『旬を下さい』ってご挨拶に行ったんだ。」
鳴り止まない拍手の中、小声で話す。
朔の言葉に呆気にとられてから、ハッと我に返り、キロッと睨んでおく。
「オレに何の相談も無しに? 」
「怒らないで」とほっぺにキスをされると、更に拍手は大きくなった。
シャンパンが運ばれて来た。
見た事の無い人だ。
「おめでとう。ここで結婚したカップルは2組目だよ。 必ず幸せになれる。」
そう言って、ワイングラスを手渡して来た。
「さ、どうぞ。シャンパンはフルートグラスで飲むより、ワイングラスで飲む方が、香りが立って美味しいよ。絶対だ。」
日に焼けた肌に、白い歯をニカリと見せて、去っていった。
朔に、目で尋ねると、
「あの人、日向さん。マスターのマスター。」
「あぁ。聞いてた。あの人が。」
それから、乾杯をして、会場は一気に和んだ雰囲気になる。
マスターが料理を運んできた。
「今日は、腕によりをかけたから、君達もいっぱい食べてね! 」
「マスターは知ってたんですね? 」
「勿論。実はね、僕がうっかりバラしちゃわないか、皆んな心配してたんだよ。そういう、僕自身もだけどね。 今日の時間を伝える時とか、スーツで来てねって伝える時とか、もう、めっちゃめちゃ緊張したよー。」
「全然気づかなかった… 」
「良かったぁー。 無事に今日を迎えられて、本当に良かったよ。」
ウィンクして、厨房に戻る。
さすが、モデル系イケメンはキザな仕草もカッコ良くキメる。
「もぅ。旬。見惚れない!」
「なっ、見惚れてないよ!」
「さあ、皆んなのテーブルに挨拶に行こう。」
「そういえば、立食形式って言ってかなった? やめたんだ? 」
「うん。 疲れるだろ? マスターの美味しい料理も食べ辛いし、ビュッフェスタイルは採用したけどね。」
「朔らしい。今日のために準備、沢山してくれたんでしょう? ありがとう。」
「でも、その分、旬に寂しい思いをさせた。反省している。最初はね、公開プロポーズだけの予定だったんだ。 … でも、この前、旬も同じ想いだって知ったら、僕の気持ちが止まらなくなっちゃって、、、宣誓式にしてもらったんだ。 実は、去年は春日さん達が、ここで宣誓式をしたんだよ。 皆んなその時も居たんだ。 今年は去年と逆の立場なんて、ちょっと照れるね。」
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