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出勤すると、まず「今日のおススメ」が賄いで出される。
賄い、ってもっと、残り物っぽい物を想像していた。
初日にその事を言うと、コレも仕事のウチらしい。
その日のおススメに、どんな食材が使われてるか、どんな味なのか、そして、その料理に合うお酒、お客様から聞かれた時に困らないようにする為らしい。
マスターのやる事には、必ず意味がある。
カッコいい。
オレもこんな大人になりたい。
今年22歳になるオレと5歳しか違わないのに……5年後、こうなってるとは到底思えない。
マスターへの恋心に気づいたものの、一向に距離は縮まらない。
何とかして、アクションを起こさなければ、このイケメンは、振り向いてはくれないだろう。
「うーむ」
どうしたものか、と唸っていると。
「どうした? 口に合わない? 苦手なモノが入ってた? 」
「いえっ! 今日も美味しいです! ホタテもぷりぷりで甘くて美味しいし、海鮮のポトフって初めて食べました」
「良かった。 ホタテの出汁って、意外と根菜に合うだろ? じゃがいもも、人参も、より一層甘みが引き立つ」
「ですね。 マスター天才です!」
取り敢えず、褒める作戦だ。
本当に美味しいから、それを素直に言葉にして伝える。
「褒めすぎ(笑)。 じゃ、今日もよろしく」
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