プロローグ

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プロローグ

 「はい。3番テーブル上がったよ。熱いから気をつけて!」  「サンキュー」  「それ出したら、帰りにカウンターのお客様の注文取って。多分、ジントニだから、タンカレー冷やしてる事伝えて」  「はい。分かりました。 史花(ふみか)さん。後ろ通りまーす」  オレは、この春から、オープンしたカフェバーameno(アメーノ)で働いている。  オープンの10日前から、メニューの暗記や接客、物の位置など、徹底的に研修を受けた。  マスターは、超イケメンで料理も上手くて優しいけど、仕事にはめちゃくちゃ厳しい。  一度、叱られっぱなしでムッとしたら、その理由を、目を見てしっかり教えられた。  自分や周りに火傷や、怪我をさせない事。  そして、お客様には日常から離れて寛いで頂きたい事。  裏を返せば、食器を落として割ったり、些細な事が苦情に繋がったりすると、その人も、周りの人にも嫌な気分を味わせてしまう。  そんな空間は、危険だし、とても寛げない。  そして、キチンとした接客は、怪我や苦情からオレ自身の身を守る事にも繋がる。  そういう事だ。 と。  惚れた。  完全に惚れた。  この日から、ここのマスター、雨野 秋成(あめの あきなり)を、なんとか振り向かせる為の作戦が始まったのだ。
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