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「ンだよ。来るなら来るって、連絡寄越せよ」 「しましたよ。世羅(せいら)に」  にゃろう。アイツが元凶か。 「よっちゃん、こちらの方は?」 「ンあ? ああ……」 「初めまして。拙僧は、巌願寺(ごんがんじ)副住職、権堂(ごんどう)直済(ちょくさい)と申します」  室内に侵入した来訪者は、馬鹿に丁寧な自己紹介と共に綺麗な所作で一礼した。 「堅っ苦しい挨拶してんじゃねぇよ。コイツは、俺の弟でな……直純ってんだ」 「弟さん? あたしは、暮羽(くれは)アンナです。宜しくお願いいたします」  軽い動揺を見せたが、アンナは立ち上がり、とびきりの営業スマイルで挨拶した。 「こちらこそ、宜しくお願いいたします。貴女を、義姉(おねえ)さんとお呼びして良いのでしょうか」 「あら。呼んでいただいたいて、良いのかしら、よっちゃん?」  思いがけないキラーパスに、俺は直純をギロリと睨んだ。余計な水を向けやがって。こっちにも順番ってぇモンがあんだろうが。 「構やしねぇよ……いずれ、そうなるんだ」  アンナはゆっくりと瞬きして俺を見詰めてから、営業スマイルではない笑顔を広げた。そして、直純に頭を下げると、パイプ椅子を勧めた。
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